さくらんぼの品種とサイズ
品種のお話
はじめに。
品種の話に入るその前に、まずはさくらんぼという名称についてから始めましょう。「さくらんぼ」とは何を意味してそう呼んでいるのか、ご存知でしょうか?
さくらんぼは、漢字にすると「桜ん坊」で、つまり「桜の子」という意味です。
それでは桜の「子」とは何かというと、桜の「実」のことを言っています。
「さくらんぼ」とは、「桜の実」のことです。
正式には「桜桃」とも呼ばれ、政府の標準成分表にも「おうとう」と記載されています。実際、明治時代の初期に欧米からさくらんぼが入ってきた頃には、桜桃と呼ばれていたそうです。
桜桃という漢字を見ると、「桜が付ける桃のような実」というニュアンスが伝わってきますね。
また、さくらんぼがなる桜の樹は、私たちがよく鑑賞するソメイヨシノやヒカンザクラなどとは植物としての種が異なります。
そしてそのさくらんぼの果樹には、いくつかの種類があります。
食用として代表的なのは、甘味のある「セイヨウミザクラ(西洋実桜)」と、酸味の強い「スミミザクラ(酸実実桜)」です。
中国原産の「シナミザクラ(支那実桜)」というものもありますが、日本のお店に並ぶ多くはセイヨウミザクラで、スミミザクラとシナミザクラは国内ではあまり栽培されていません。
また、日本ではアメリカから輸入されるアメリカンチェリーもたくさん流通していますが、これもセイヨウミザクラ(西洋実桜)で、日本で栽培されているさくらんぼと同じ種です。
両者は見た目からしてかなり違うのですが。
世界で栽培されているさくらんぼの品種は、どれくらいあると思われますか? なんと1300種以上もあるのです! そのうち山形県では30くらいの品種が栽培されていると言われ、新しい品種も増えています。
日本のさくらんぼの進化は、まだまだ始まったばかりといえるかもしれませんね。
それでは現在の代表的な品種を取り上げ、以下に説明してまいります。
全部で8つほどピックアップしました。
じつは最後にご紹介する⑧は、正しくは品種ではありません。
便宜のために他の品種と同列で扱わせていただきましたこと、ご了承ください。
さくらんぼ紹介 その1
佐藤錦
「佐藤錦」は、さくらんぼの代名詞的存在になっている無双の人気品種。
山形県の苗木商・佐藤栄助氏が「ナポレオン」と「黄玉」という品種の掛け合わせから開発し、昭和3年(1928年)に命名されました。
山形県は国内のさくらんぼ生産量の7割以上を占めていますが、その山形県における栽培面積の7割以上を佐藤錦が占めています。
鮮やかな紅色が色づく、光沢のある果皮。柔らかめの乳白色をした果肉。果実の重さは6g程度が普通ですが、近年は大玉の栽培もされています。糖度は14%以上で、20%を超えることも。上品な甘味に適度な酸味が見事に溶け合う、バランスが抜群の一級品です。
佐藤錦の本来の収穫シーズンは6月中旬~7月初旬ですが、温室栽培(ハウス栽培)の佐藤錦は5月に早くも食べ頃を迎えます。温室栽培ものは、いわば農家さんたちのアート作品。細やかな温度調節や水分調節を重ねて育てられます。
さくらんぼ紹介 その2
紅秀峰
「紅秀峰」は、「佐藤錦」と「天香錦」という品種の交配から生まれたさくらんぼ。平成3年(1991年)に品種登録され、佐藤錦に次ぐ生産量をマークしています。
果皮はきれいな真紅色で、果肉は黄白色。大粒で、実がよく締まって、固めなところが人気を集めています。果実の重さは10g程度。糖度は20%前後と高く、酸味は少なめ。大粒で食べ応えがあること、パリッとした食感があること、際立つ甘味の中に豊富な果汁を愉しめることなどが、紅秀峰の特徴です。果肉がしっかりしているため日持ちもする品種。これも支持を集めている理由のひとつでしょう。
紅秀峰の収穫期は6月の終わりから7月中旬頃です。毎年、佐藤錦からバトンを受け継ぐかのように登場して、さくらんぼシーンを盛り上げてくれる晩生種。年々ファンを増やし続けている、人気上昇中の品種です。
さくらんぼ紹介 その3
紅さやか
「紅さやか」は、「佐藤錦」と「セネカ」という品種の交配種。品種登録されたのは「紅秀峰」と同じ平成3年(1991年)です。
6月上旬から収穫期を迎える早生種のひとつで、着色初期の果皮はさほど濃くない紅色です。
ところが収穫期が進むにつれて濃く色づき、黒っぽい色あいになってきます。
果皮だけでなく果肉まで紅味をおびてくるのですが、これが紅さやかのユニークなところ。
色が濃くなるほど糖度も高まる傾向があります。
果実は可愛らしいハート形をしていて、その重さは6g程度。早生種の中では大きめです。
糖度は15度程度と甘味に優れ、酸味とのバランスも良好。
果汁も多く、果肉の固さは中程度。紅さやかも確実にファンを増やし続けている、とっても魅力的なさくらんぼです。
さくらんぼ紹介 その4
ナポレオン
「ナポレオン」は、ヨーロッパでは古くから栽培されていた由緒あるさくらんぼ。正確な誕生時期は定かでありませんが、17世紀頃にはヨーロッパで栽培されていたようです。
日本にはヨーロッパからではなくアメリカから、明治維新後に入ってきました。しかし詳しい伝来の経緯は分かりません。
この品種をもとに、「佐藤錦」や後ほど紹介する「南陽」が生まれました。日本のさくらんぼ栽培の土台を築いてくれた、世界的にポピュラーな品種のひとつです。日本における主要産地は、もちろんやっぱり山形県です。
果皮はツヤのある紅色で、完熟すると全体が見事に着色します。果実の重さは7g程度。一般的なさくらんぼと比べるとひと回り大きく、食べ応えがあります。果肉はよく締まっていて、糖度は13〜15度程度。果汁も豊富で、酸味もしっかりしていて、重厚な甘酸っぱさを味わえます。収穫時期は6月下旬頃からです。
さくらんぼ紹介 その5
大将錦
「大将錦」は、“偶発実生”のさくらんぼ。偶発実生とは、偶然に発見され、優れた形質をもっているという意味です。山形県上山市の農園で発見され、平成2年(1990年)に品種登録されました。その農園では「ナポレオン」「佐藤錦」「高砂」などが育てられていましたが、どの品種が親になったのかはよく分かっておりません。
第一に特筆すべきは、じつに立派な果実です。さくらんぼの一般的な果実の重さが5〜6g程度なのに対し、大将錦の果実は10g級。まさしく大将クラスで、果肉も固めでしっかりしています。さらには糖度も20度級で、果汁も豊富。
おだやかな酸味とのバランスも秀逸で、大将錦ならではの濃い味が愉しめます。
糖度が高いさくらんぼは、果実が柔らかくなりすぎたり、裂果が生じたりしがちなものですが、大将錦には“うるみ”や“色むら”が出ないという特徴も。日持ちもよいということで、ファンも多いです。晩生種のため7月上旬からが収穫期となります。
さくらんぼ紹介 その6
紅てまり
「紅てまり」は、「佐藤錦」と「ビッグ」という品種の交配から生まれた品種。
平成12年(2000年)に品種登録されました。交配されたのは日本を代表するさくらんぼ産地、山形県寒河江市の園芸試験場でした。
「大将錦」と同じように、紅てまりも10g級の立派な果実をしています。糖度も20度級で、果汁も豊富。強い甘味の中に程よい酸味があり、絶妙のバランスです。果肉も固めでしっかりしているため、日持ちもします。
形の整ったハート形の容姿や、紅てまりという可憐さを感じさせる名前も人気の秘密のようですね。
晩生種のため、収穫期もやはり大将錦と同じく7月上旬からになります。さくらんぼシーズンとの別れを惜しみ始める頃に現れる、夏の人気者。暑い季節のギフトとして贈られると、誰でもハッピーになれるさくらんぼ。紅てまりには、そんな表現が似合うかもしれません。
さくらんぼ紹介 その7
南 陽
「南陽」は、「ナポレオン」の“自然交雑実生”から育成されたさくらんぼ。
自然交雑実生とは、果樹園などで自然に交雑して得られた植物の生長という意味です。山形県の農業試験場で育成され、公的機関による国内初の育成品種のひとつとされています。
昭和53年(1978年)に品種登録されました。
果皮は「佐藤錦」などに比べると地色が薄く、陽光にあたっていた面が紅色に色づいています。果実の重さは8〜10g程度と大粒。黄白色の果肉の果汁はたっぷりで、糖度は14〜16度程度です。酸味は少なく感じられ、爽やかな甘さで食べ飽きることがないと、よく言われます。
南陽は近年では北海道でも盛んに生産されていますが、そのルーツの地は山形。Fruits Farmersの『さくらんぼ専門通販』では、山形県産の南陽をお取り寄せできます。収穫期は、山形県産は6月下旬頃から、北海道産は7月中旬頃からが一般的です。
さくらんぼ紹介 その8
アメリカンチェリー
「アメリカンチェリー」とは、正しくは品種ではありません。アメリカから輸入されているさくらんぼの総称です。ですからアメリカンチェリーと呼ばれるものには、いくつもの品種が存在します。日本で流通しているアメリカンチェリーのうち、大半を占めているのが「ビング」という品種です。
ビングは果皮が濃い赤紫色をしていて、見るからに日本産とは異なる色味をしています。サイズもかなり違っていて、日本産よりもビッグです。もちろん食感や味わいも異なり、独特の強い甘味があります。まとめて簡単に言えば、粒が大きく・果肉が固いこと、酸味が少なく・甘味が強いこと、加えて日本産に比べると価格が手頃なことなどが、アメリカンチェリーの特徴といえるでしょう。
ビングに次いで流通しているのが赤い果皮の「レーニア」で、この2つが日本で出会うアメリカンチェリーの代表的な品種です。その他「ブルックス」「ツラーレ」「スイートハート」など、様々な品種があります。アメリカンチェリーの主な生産地は、オレゴン州、カリフォルニア州、ワシントン州などのアメリカ西海岸。収穫時期は、品種や地域によって異なります。
※アメリカンチェリーは、当専門通販ではお取り扱いしておりません。
サイズのお話
さくらんぼには、「M」「L」「LL」「3L」「4L」といったサイズがあります。
これらのサイズは、どう決められているのでしょうか?
何か正式な基準とかがあるのでしょうか?
さくらんぼのサイズ区分には、正式で明確な基準が存在します。
それは都道府県によって異なるのですが、ここでは山形県の基準についてご説明します。
加えてさくらんぼの「着色」や「等級」についてもふれ、皆さまのもとへ届く山形さくらんぼの品質がきちんと守られていることをお伝えしたいと思います。
さくらんぼのサイズ区分は、「重さ」でなく「直径」で決まります。
山形県には、自県の青果物の品質とブランドを守るための要綱があります。
「山形県青物等標準出荷規格」というものです。山形県産のさくらんぼも、この要綱に定められた基準を守った上で出荷されています。
統一的な公定基準をみんなで遵守しているからこそ、日本一のさくらんぼ産地にふさわしい品質とブランドを維持できているのですね。
その「山形県青物等標準出荷規格」では、さくらんぼのサイズ区分に関して次のような基準を設けています。
Sサイズはないの? そう思われる方もいらっしゃるかもしれません。
じつは16㎜以上がSなのですが、Sは生食用の出荷対象からは外して加工用に利用しています。一般的にさくらんぼは、大きめのサイズのほうが糖度も高い傾向にあり、甘くて美味しいとも言われます。
品質とブランドの観点から、Sサイズは除外しているのです。
いずれにしても何よりもまず、さくらんぼは重さではなく直径で区分されていること、そして統一のルールで公正に区分されていることを、ぜひ理解しておきましょう。さくらんぼのサイズ区分は、生産者さんや販売者が自由に決められるものではないのですね。
公定の出荷規格を遵守するために、山形のさくらんぼ生産者の皆さんはサイズを測る基準プレートを携えています。出荷作業場に行けば必ずお目にかかれる、プロ御用達の測定用具。さくらんぼを選り分ける現場では、厳格に、誠実に、集中して計測と選別が行われています。
50円玉と500円玉のお話。
ところでこのさくらんぼのサイズ、プロ御用達の測定用具を持っていない私たちにも推し測りやすい、便利な方法があります。
50円玉と500円玉を使うという手があるのです。
50円玉の直径が21mm。500円玉の直径が26.5mm。まずこれを覚えておきましょう。そうすれば、50円玉の大きさに近いものがMサイズかLサイズ、500円玉とほぼ同じで小さめなものがLLサイズ、ということになりますよね。
ただし硬貨も摩耗しますから、お手持ちの50円玉や500円玉によっては誤差もあり得ます。そのことを理解した上で、知っておくとよい方法だと思います。
果実の着色の違いによって、さくらんぼの等級が決まります。
果実の色、つまり着色の具合も、さくらんぼの品質を決める大事なポイントです。さくらんぼの着色は、見映えのよしあしを決めるだけではありません。サイズに関しても言えることですが、味のクオリティと関係してきます。たとえば太陽の光がよく当たることで紅く色づき、同時に実も大きくなり、美味しくなるというわけです。
「山形県青物等標準出荷規格」では、着色を指標にしてさくらんぼを区分する際の規格も設けています。そしてその際の基準として定められているのが、果実の着色面積の割合。着色面積50%以上のさくらんぼが生食用の出荷対象に、50%未満のものは生食用以外での利用対象に、まずは選別されることになります。
次に、着色面積の割合が50%以上のさくらんぼの中で、「60%以上」「70%以上」というような区分がされます。そして、この着色の区分によって、さくらんぼの等級も区分されていくのです。
さくらんぼの等級とは「秀/優/良」(※注)というランクのこと。
佐藤錦と紅秀峰を例にすると、次のようになります。
佐藤錦の場合
- 着色面積70%以上が「秀」
- 着色面積60%以上が「優」
- 着色面積50%以上が「良」
紅秀峰の場合
- 着色面積80%以上が「秀」
- 着色面積65%以上が「優」
- 着色面積50%以上が「良」
着色の区分によってランクが決められるのですから、さくらんぼにとっていかに着色が大事な要素かが分かります。果実の着色と、そしてサイズは、さくらんぼの品質の決め手となる大切なポイント。
その基準を県がきちんと定め、生産者の皆さん全員が遵守することで、クオリティの高い日本一のさくらんぼが全国へ届けられているのですね。
※注:「秀/優/良」の等級表示は、「特秀/秀/マル秀」として表示されることもあります。